令和7年度市長施政方針
令和7年度の市長施政方針を、令和7年第1回市議会定例会で表明しました。
令和7年度市長施政方針
東大和市長 和地 仁美
令和7年第1回市議会定例会の開会にあたりまして、市政に対する所信を申し述べ、市議会並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
はじめに、昨年、この場で述べた山積した難題について、その取組状況等を申し述べます。
1点目として、難題に対峙するために必須の「人事と組織の改革」についてであります。
組織は人なりと申しますが、現在、民間企業への派遣、プロフェッショナルスクールでの学習といった職員個々の育成を進めております。また、職員の頑張りに報いる人事評価制度の構築、勤務間インターバルの本格実施や働き方改革など、働く環境の整備にも力を入れています。更には、女性の再就職応援宣言によるキャリア採用や、およそ30年ぶりに高校卒の採用を再開するなど、幅広く人材を確保する取組にも尽力しています。こうした人事にまつわる取組をパッケージとして行うことで、東大和市が選ばれる市役所となるための第一歩を踏み出しました。
これら一連の流れを受けて、職員が自主的に他自治体の先駆的取組を視察し、例えば、手作りでフリーアドレスを設計し導入するなど、様々な職場に芽生えた新たな息吹も感じているところです。職員の気づきや成功体験による変化が組織マネジメントの土台を作り、また組織マネジメントが職員を育成していく。将来にわたり市民サービスを向上させていくためには、こうした人を活かす人事改革が不可欠との信念のもと、目先の利益だけでなく、ここが頑張りどころとして「未来のありがとう」のための取組を継続してまいります。
次に、「市財政」についてであります。
物価高騰や人手不足が叫ばれて久しい折ですが、これらは市財政にも影を落とし始めています。特に、令和7年度予算編成では、職員人件費と校務用ネットワークの更新費用がかさみ、近年にない厳しい編成となりました。過度に財政調整基金に頼った財政運営の限界を改めて痛感したところです。加えて、令和5年度決算における経常収支比率の悪化も看過できない事象です。子どもの医療費や給食費の無償化に見られるように、市の財政負担を前提とする取組が脚光を浴び、これが自治体間競争の最前線となっていることは否めません。財務の課題を跳ね返すためには、様々な業種の創業や企業誘致をはじめ、市内にお金の流れを生み出す施策を、職員とともに整えていくことが欠かせません。それはまさしく、職員の人材育成及び組織マネジメントの果実として生みだされていくものと考えています。
次に、「公共施設の老朽化対策」についてであります。
学校をはじめ、全ての公共施設を更新するには、膨大な費用負担を要するため、最終的な更新の姿が見い出せず、事業の頓挫が脳裏をかすめる状況にありました。こうした閉塞感を打破するため、令和7年度半ばを目途に『再配置計画素案』を策定し、公表してまいります。今回の計画は、床面積を単に削減する負の計画ではなく、市の目指す新しい教育の姿、子育て支援の姿、コミュニティの姿を掲げ、それを学校などの拠点において実現し、未来につながる魅力ある計画として策定してまいります。
次に「DXの推進」についてであります。
将来、人口減少が進み、限られた職員体制による運営が求められる中、市民サービスを維持・向上させる術としてデジタルの先取りは欠かせません。そこで、令和6年度の「行かない市役所」、「書かない窓口」の流れを更に加速させるため、令和7年度においては、申請件数が、年100件以上ある手続きについて、可能なものからオンライン化に取り組み、名実ともに“デジタル市役所元年”とする所存であります。今後は、デジタル化と合わせた職員の意識改革とそれらによる業務改革にも、さらに力を入れてまいります。
最後に、「組織改正」についてであります。
令和7年4月に実施する組織改正は、部の統合による連携強化とヒト・カネ・情報といった経営資源の集約によって仕事を動かす本格的な布陣を敷きます。様々な難題につきましては、この布陣をもって私の代で道筋をつける、こうした決意のもと、残された任期の1年1年を不退転の決意で結果に向き合い臨んでまいります。
令和7年度は、市民の皆様から賜りました市長任期の折返しの年となります。この間、私が重視してまいりました、人事と組織の改革をベースに据えながら、任期後半も志ある職員とともに、前例に捉われず物事の本質に勇気をもって向き合い、東大和市の未来につながる市政運営に邁進していく所存であります。
令和7年度重要施策
それでは、これより重要施策4点につきまして、申し上げます。
(重要施策1)子ども・子育て支援施策の推進
第1の重要施策として、「子ども・子育て支援施策の推進」について申し上げます。
子どもや若者、子育て世帯への支援施策につきましては、『東大和市子ども・若者未来プラン』の初年度として、子どもや若者・子育て世帯の視点を尊重し、すべての子どもたちの健やかな育ちと若者・子育て世帯を支援するための取組を進めてまいります。
妊産婦や子育て世帯への支援につきましては、「産後ケア事業」において、産後の母子が市外の医療機関を利用できるよう、利便性の向上を図ってまいります。また、国や東京都の補助事業を活用した「出産・子育て応援事業」や「バースデーサポート事業」により、経済的支援を進めてまいります。
子育て相談体制につきましては、令和7年4月に会議棟に「子ども家庭センター」を設置し、児童福祉機能と母子保健機能を一体的に運営し、体制を強化することで、全ての妊産婦・子育て世帯・子どもに対する重層的・包括的な支援を進めてまいります。
子育て環境につきましては、保護者の多様な保育ニーズに応えるため、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」の実施施設の拡充を図ってまいります。
保育施設等の整備につきましては、大和南保育園跡地の「子育てひろば」に、新たに一時預かり事業に必要な保育室や調理室などの設備を増築し、地域子育て支援拠点の更なる機能の強化を図ることで、子育て支援施策の維持向上に引き続き努めてまいります。
次に、「子どもたちの健全育成」についてであります。
放課後の児童の居場所として実施する、学童保育所、ランドセル来館及び放課後子ども教室につきましては、各事業間で連携を図るとともに、それぞれの役割について検討するなど、児童の健全育成に努めてまいります。
次に、「学校教育」についてであります。
学力向上につきましては、1人1台端末を更新し、学習の見通しや計画を立てたり、他の児童・生徒などと協働しながら調べ、考え、自分なりの答えを導き出す学習活動を、ICTを活用してさらに充実させ、児童・生徒の確かな学力の育成を図ってまいります。
また、外国語教育の充実につきましては、中学校の「オンライン英会話学習」や小学校第5学年を対象とした「東京グローバルゲートウェイ グリーンスプリングス」における外国を模した疑似空間での英会話学習を引き続き実施してまいります。
体験活動の充実につきましては、新たな取組として、集団活動を通して、互いを思いやり、協力し合うなどのよりよい人間関係を形成しようとする姿勢の育成に向けて、市内全小学校第5学年を対象に、群馬県の赤城において「移動教室」を実施いたします。
「学校給食費の無償化」につきましては、子ども・子育て支援施策の推進のため、令和7年1月から実施しているところではありますが、引き続き東京都の補助金などを活用して進めてまいります。
施設整備につきましては、第七小学校と第九小学校の統合に向けて、安全・安心で教育環境の変化に対応可能な新しい時代の学校づくり、また地域コミュニティの核となる魅力ある学校づくりを進めるために、公募型プロポーザルを確実に実施し、基本設計等、計画的に進めてまいります。
また、蛍光灯の生産・輸出入が令和9年12月に終了することを見据えて、LED照明を第七小学校と第九小学校を除いたすべての小・中学校に整備し、学校施設の脱炭素化と省エネルギー化を推進してまいります。
(重要施策2)健康・高齢者施策の推進
続きまして、第2の重要施策である「健康・高齢者施策の推進」について申し上げます。
はじめに、「保健・医療」についてであります。
胃がん検診につきましては、新規事業といたしまして、「胃カメラによる内視鏡検診」を実施し、胃がんの早期発見・早期治療により市民の皆様の健康の保持増進を図ってまいります。
予防接種につきましては、「帯状疱疹ワクチンや小児インフルエンザワクチン接種の費用助成」により、疾病予防の取組を推進してまいります。
次に、「高齢者福祉」についてであります。
認知症のある高齢者が、日常生活上の介護・援助を受けながら、自立した生活を営めるよう「認知症高齢者グループホームの整備促進事業補助」を行うとともに、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう、地域包括ケアシステムの推進を図ってまいります。
次に、「生涯学習及びスポーツ、レクリエーション」についてであります。
生涯学習等につきましては、『生涯学習・生涯スポーツ推進計画』に基づき、各種事業を計画的に実施してまいります。
特にスポーツにつきましては、市長部局へ移管することにより、引き続きスポーツの振興を図るとともに、スポーツと観光事業などとの連携による地域活性化、スポーツと介護予防、健康長寿事業との連携など、様々な展開を検討してまいります。
また、公民館につきましては、インターネット環境が整ったことを受け、次のステップとして各公民館のロビーや狭山及び蔵敷公民館の図書室のレイアウトを工夫することで、子どもをはじめ、市民の皆様の様々な活動への支援を進めてまいります。
(重要施策3)都市の価値を高める施策の推進
続きまして、第3の重要施策として、「都市の価値を高める施策の推進」について申し上げます。
はじめに、「防災」についてであります。
災害対応力の強化につきましては、令和6年度に修正した『地域防災計画』に基づき、地域の防災・減災に向けた取組を推進するとともに、計画の実行性を高めるため、東大和市総合防災訓練の内容をより実践的なものとし、職員の発災時における対応力を高めてまいります。
また、消防団全分団の消防ポンプ自動車の更新を完了するとともに、消防団本部の指揮車両の更新に向けた準備を進めてまいります。
自助・共助による防災活動の推進につきましては、減災を目的とした取組として、首都直下地震等の大震災を想定し、停電後の通電時に発生する電気火災を予防するため、「感震ブレーカーの購入費用」について、新たに補助を行ってまいります。
次に、「都市づくり」についてであります。
主要な拠点形成につきましては、東大和市駅周辺における都市機能の高度な集積に向けたまちづくり方針等の検討や、上北台駅周辺における良好な住環境や地域コミュニティの核の形成等に向けた地区計画の「素案」の作成などを進めてまいります。
また、令和6年度末に改定予定の『都市マスタープラン』を踏まえ、集約型の地域構造への再編に向けた都市機能や居住機能の立地誘導と、それと連携した持続可能な地域公共交通ネットワークの形成に取り組むため、『立地適正化計画』と『地域公共交通計画』の一体的な策定に着手してまいります。
空家等の対策につきましては、令和7年4月に施行を予定しております『特定空家等及び管理不全空家等の認定等に関する条例』に基づき、空家等対策協議会の意見を聴きながら、特定空家等の認定に備えた検討を行うなど、適切な対応を図ってまいります。
当市の貴重な資源である狭山緑地につきましては、市内外から多くの方々に何度も来訪していただけるよう、「フィールドアスレチック改修事業」を進めるにあたり、事業の効率的・効果的な運営等を図るための民間活力導入の検討を進めてまいります。
また、市内の公園のあり方などについては、公園等の魅力向上や機能分担、持続可能な公園運営などを引き続き検討し、再整備方針等の策定に取り組んでまいります。
次に、「商工業、勤労者支援」についてであります。
産業振興につきましては、市内創業の促進を図るため、創業塾の実施や、地域活性化に繋がる企業誘致及びスタートアップ企業の支援について、引き続き調査し、情報収集を進めてまいります。
(重要施策4)持続可能な行財政運営等の推進
続きまして、第4の重要施策として、「持続可能な行財政運営等の推進」について申し上げます。
はじめに、行財政運営、行政改革についてであります。
今後も厳しい財政状況が見込まれる中、市の行財政運営を安定的に維持し、市民サービスの向上を図るために、第6次行政改革大綱に基づく取組を推進し、持続可能な行財政運営に努めてまいります。
DXの推進につきましては、公共施設の予約申請や体育施設等の利用料の支払いをオンラインで行うことができる新たな施設予約システムの導入により、さらなる市民サービスの向上を図ってまいります。
庁内におきましては、財務会計システムの更新に伴い、収支事務に係る会計伝票等の電子化を目指すとともに、仕事の生産性の向上を図ってまいります。
また、人事給与システムの更新に合わせて導入する庶務事務システム等の利用により、勤務状況の管理や各種届出等の電子化を目指し、より一層の人事管理の効率化を進めてまいります。
職員の働き方改革につきましては、職員の健康保持と生産性向上を図るため、コンサルティング事業者の支援を受けながら、職員の仕事に対する意識改革や働き方改革を進めてまいります。
また、職員を民間企業に派遣し、マーケティングスキルのほか、民間企業の考え方や働き方を習得する人材育成の取組を進めながら、派遣を通じて得た、様々なジャンルのエキスパートの方々との人脈・ノウハウを行政施策に反映することで、より質の高いサービスとして市民等に還元してまいります。
次に、「公共施設等マネジメント」についてであります。
本庁舎におきましては、照明のLED化を実施し、より一層の脱炭素化と省エネルギー化を推進してまいります。
公共施設の再編につきましては、既存施設の将来にわたる維持管理コストや児童・生徒数の推計を行いながら、予算と連動した上で、具体的な再編像について組織の枠を超え、オール東大和市役所で検討を進めてまいります。
次に、「協働・情報共有」についてであります。
市民参加や協働につきましては、その基礎となる、市政への理解と、市民に開かれた市政運営を進めるため、引き続き、「東大和ヒトみらいトーク」を実施し、市民の皆様と市政運営に関して率直な意見交換を行ってまいります。
情報共有につきましては、魅力があり、読みやすい市報を目指し、内容の全面的なリニューアルと全戸配布を行うとともに、 LINEを活用したセグメント配信や市民アンケートの実施等、SNSなどを活用し、積極的かつ効果的な広報広聴活動に努めてまいります。
(重要施策以外の令和7年度に取り組む主な施策)「健康であたたかい 心のかよいあうまちづくり」について
最後に、重要施策以外の令和7年度に取り組む主な施策につきまして、「第五次基本計画」の施策の体系に沿って、申し上げます。
「健康であたたかい心のかよいあうまちづくり」について申し上げます。
障害者福祉施策では、障害者理解の取組の一つとして『東大和市手話言語条例』を制定し、言語としての手話の理解促進と普及に関する事業を実施してまいります。なお、令和7年度は、東京2025デフリンピックのボウリング競技が市内で開催され、機運醸成の取組も展開されます。これらの相乗効果により、手話と聴覚障害者への理解促進を図ってまいります。
次に、「社会保障、地域福祉」施策では、災害発生時における円滑かつ迅速な避難を確保するため、避難行動要支援者名簿に登録されている要介護認定3以上の方などの『個別避難計画』の作成を進めてまいります。
令和7年度予算の編成等
続きまして、令和7年度予算の編成について申し上げます。
令和7年度予算の概要でありますが、物価高騰の影響が長引く中、財政運営への影響が見込まれるところではありますが、歳入では、市税等について、令和5年度決算や令和6年度の収入状況等を参考にし、税制改正も注視しながら計上いたしました。
また、歳出では、一つ一つの事業の意味、意義を十分考慮し、1円たりとも無駄にせず、自らの知恵と工夫で効果や価値を倍にするという熱意のもと計上いたしました。
引き続き、厳しい財政状況が見込まれる中、行政改革に取り組み、積立基金の確保など市財政の持続性と健全性を維持するとともに、時代の変化に即応できる財政運営に努めてまいります。
以上、市政に対する私の基本姿勢と令和7年度の主要な取組について申し上げました。
市をとりまく現状を改めて確認しますと、今年我が国では、団塊の世代が全員75歳以上となり、国民の5人に1人が後期高齢者となります。東大和市においても、すでに2000年頃から、市内の65歳以上の「老年人口」の割合が、15歳未満の「年少人口」の割合を上回り始めており、市内における生産年齢人口が減少する中で、高齢者の割合は年々高くなっていく見通しです。今後、医療や介護の需要の急増、社会保障費の増大や労働力不足など、私たちの社会・経済にさらなる影響をもたらすだけでなく、市財政においては、将来的な「市税収入の減少」や「扶助費増大」に結び付く可能性が必至の状況となることにも留意しなければなりません。
人は、一般的に、遠い将来に起きる出来事を小さく評価する傾向があるそうです。具体的に言いますと、人は「すぐに」もらえる報酬ほど、その価値を大きく感じ、もらえる時間が遅くなると徐々にその報酬に対する魅力や価値を少なく感じていくという性質を持っており、これを心理学や経済学では「時間割引」と呼びます。
市の「将来的な発展」につなげるための意思決定を行っていくには、この「時間割引」という人の性質が、自身の判断に影響していないか常に意識することが大切です。
令和7年度の予算編成では、未来を見据え、将来的に市が得られるであろう利益の価値を見極めながら予算案を編成し、ご提案させていただきました。
よって、令和7年度も「今のありがとうだけでなく、未来のありがとうのために」をキーワードに、「未来につながる市政」を進めてまいりますことを強くお誓いし、令和7年度の施政方針といたします。
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