これまでも子どもや教育に関するさまざまな施策について、力を合わせて進めてきた和地仁美市長と岡田博史教育長。2026年の新春特別企画として、これからの教育とまちの未来についてお二人が語り合いました。
子ども一人ひとりにスポットライトを

東大和市では、子ども・子育てに関する理念として「豊かな心と幸せを育み、すべての子ども・若者が未来への希望を持てるまち」を掲げています。この理念にはどのような想いが込められているのでしょうか。
市長
社会の変化が激しく、私たちの価値観も多様化しています。そんな中でも、子どもたちが変化に振り回されることなく柔軟に対応しつつも、守るべきものを守り、自分らしくのびのびと学べる環境を整えることが大切だと常々感じています。
子どもの「好き」や「得意」を伸ばしていくことはとても大切ですが、子どもの世界というのは意外と狭いものです。だからこそ、子どもがまだ知らない世界を大人が見せてあげたり、経験を広げてあげたりすることが必要だと思います。
子どもたちには、できるだけ多くの体験をしてもらいたいです。その中で、「これは好き」「これはちょっと苦手」「やってみたら意外とおもしろかった」と感じる機会や、知らなかったことを知る機会を持つことが重要です。経験を通じて自ら判断できるようになることが、これからの時代を生き抜く力になると考えています。
教育長
今の子どもたちが10年後、20年後に社会へ出たとき、「東大和で学んでよかった」と思ってもらえる教育を実現することが、私の最大の目標です。
そのような中、市長が仰ったように、体験を通じて学ぶことはとても重要です。そしてその背後には、常に子どもを支える大人の存在があります。子どもたちにとっては貴重な学びになりますので、大人が挑戦したり、時に失敗したりする姿を見せることも必要だと思っています。大人が前向きに挑戦している姿を見れば、子どもたちも「自分もやってみよう」と思えますよね。そのような挑戦を歓迎する土壌を教育現場全体で育てていきたいと思います。

子どもの「得意」にスポットライトを当て、自己肯定感を育む

市長
私がもう一つ大切にしているのは、子どもたちの自己肯定感を高めることです。私が市議会議員であった頃、自身が所属する厚生文教委員会が行った所管事務調査において、国が例年実施している「全国学力・学習状況調査」の結果が市から示されました。その年の調査では、東大和市の子どもたちの自己肯定感が、全国平均よりやや低い傾向にあることが分かりました。その結果を見て本当に残念に思ったことを強く記憶しています。
子どもたちが自分を好きになれないというのは、社会にとっても大きな損失です。だからこそ、子どもたち一人ひとりにスポットライトを当て、得意なことを認めてあげる場を増やしていきたいと考えています。
走るのが速い子、絵が上手な子、昆虫に詳しい子など、それぞれあると思いますが、一人ひとりの「得意」を認める機会を増やすことで自己肯定感が育まれ、将来の自信につながっていくのではないでしょうか。
これは子どもだけでなく、大人にも言えることです。今は人生100年時代と言われていますが、定年退職後に「居場所がない」と感じる人も少なくありません。そうした方々が地域活動やコミュニティ・スクール(学校と保護者や地域の方々が学校運営に取り組み、地域と一体となって子どもたちの成長を支えていく体制づくりを推進する取り組み)などで、自分のスキルや得意を活かせたら素晴らしいです。子どもたちから「おじちゃん、すごいね!」なんて言われたら、きっと嬉しいと思います。
日常の中でお互いを認め合い、高め合うような機会が増えること。それこそが、地域を元気にする本当の原動力ではないでしょうか。

教育長
最近は、市民文化祭などでも、子どもたちの多様な才能を見る機会が増えています。絵画、演奏、演劇、スポーツ……いろいろな分野で子どもたちが輝いています。
みんなが同じ方向を向く必要はありません。それぞれの得意分野を伸ばせるような環境を、地域と学校が協力して整えていくことが大切だと思います。市長とも連携しながら、そうした「子どもたちの才能が開花する場」をこれからも増やしていきたいです。
制度を柔軟に見直し、より良い教育環境づくりへ

教育現場における教職員の負担が課題とされていますが、環境改善に向けた取り組みについても教えてください。
教育長
教育現場では「子どもが主役」と言われますが、私は「教職員もまた主役」だと思っています。教職員が元気でなければ、子どもは元気になりません。そして子どもが元気でなければ、家族も不安になります。だからこそ、まず教職員が心身ともに元気に働ける環境を整えて、元気の好循環をつくっていくことが重要だと思っています。
その取り組みの一つとして、令和7年度から市内の公立小中学校で春休みを1日延長し、小学校の入学式は始業式の2日後にしました。これまでの春休みは4月5日まで、6日に始業式と入学式(中学校は始業式の翌日)というスケジュールでしたが、これでは教職員の新年度準備期間が3日程度しかありませんでした。結果的に新学期を迎える子どもたちも落ち着かず、心の準備が不十分なままのスタートになってしまいます。
しかし春休みを1日延ばすことで、教職員は余裕を持って新学期の準備ができ、また在校生も落ち着いて新入生を迎えることが出来るようになったので、思い切って延長してよかったと思っています。

市長
行政というのは、法令遵守が基本です。そのため、どうしても前例踏襲や失敗を避ける傾向が強くなりがちですが、「きちんとする」ことが目的化してしまうと本来の目的を見失ってしまう危険性があります。
制度は守るべきものですが、現場の声を聞き、必要であれば柔軟に変えていく姿勢も大切だと思います。
教育現場においても、長年続いてきた慣習を疑うことは勇気がいることですが、教育長のように、現場の声を聞き、問題の本質を見極めて、「必要であれば柔軟に変えていく姿勢」を持つことでよりよい教育環境を生み出すことができます。
行政も同じく、真の目的を見据えて柔軟に考え、変化を恐れない姿勢を大切にしていきたいと思います。
赤城高原移動教室 ~体験を通して成長する子ども~

今年度から始まった「赤城高原移動教室」は、どのような経緯で実施されたのでしょうか。
教育長
「子どもたちに多くの体験をさせてあげたい」という市長の考えに共感しています。体験には、子どもを大きく成長させる力があります。これまで市内の6年生は宿泊行事を行っていましたが、5年生では学校によって実施状況に差がありました。これでは体験の機会に格差が生まれてしまいます。
また、5年生で宿泊を経験しておくと、翌年の6年生の行事がより深い学びのあるものになります。そうした相乗効果も期待して、すべての学校で5年生の宿泊行事を実施できるよう働きかけてきました。
市長
東大和市には10校の小学校がありますが、確かに5年生の宿泊行事については実施状況にばらつきがありました。理由はそれぞれありますが、同じ市内、市立学校で子どもたちの経験に差が生まれるのは望ましくありません。
ただ、宿泊行事は費用の負担が伴います。そんな中で「赤城青少年交流の家」という国立の施設を紹介していただきました。視察したところ環境・内容ともに素晴らしく、しかも費用も抑えられます。「これならば実現可能かもしれない」と確信し、教育長とも相談してトントン拍子に実現しました。
実施後、子どもたちから「赤城、楽しかった!」という声をたくさん聞きました。自然の中で寝泊まりし、仲間と過ごす時間は、子どもたちの心に深く残る体験になったと思います。
教育長
学校行事全体が縮小傾向にある中で、5年生の宿泊行事を新たに設けるのは逆行しているように見えるかもしれません。しかし私は「本当に大事なことには時間もお金もかけるべき」と考えています。今回の試みは、まさにその実践でした。子どもたちの反応を見ればその価値がわかりますね。
市長
私自身、大学時代に出身地域の異なる友人たちと小中学校の思い出を話したとき、地域によって本当に違いがあることに驚きました。だからこそ、東大和市の子どもたちには「自慢できる思い出」を持ってほしいと思っています。
将来どこかで「東大和ではこんなことをしたんだよ」と話せるような経験。それがやがて故郷への誇り、つまりシビックプライドにつながるのだと思います。

GIGAスクール構想とオンライン英会話 ICTが広げる学びの可能性

国が進める「GIGAスクール構想(令和元年に開始された、全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み)」を、東大和市としてどのように教育現場で実現されていますか。また、令和5年度より市内の中学校で実施しているオンライン英会話の取り組みについてもお話を伺えたらと思います。
教育長
令和3年4月から、市内の全ての児童・生徒に1人1台のPC端末を導入しました。最初はどうなるか不安もありましたが、子どもたちは大人が想像する以上に早く慣れ、今では、PC端末は学びを深めるために自然に使うツールになっています。調べ学習や発表、意見交換など、学びの幅が大きく広がりました。
ただし、PC端末はあくまで学びの道具の一つです。全てをデジタルで完結させるのではなく、ノートに手書きしたり、本を読んで調べたりすることも同じくらい大切です。ICTとアナログを組み合わせたハイブリッドな学び方を、これからどう定着させていくかが教育現場の課題だと考えています。
市長
子どもたちは新しい物に対して柔軟で、吸収も早いですよね。その順応力には本当に驚かされます。大人が構えてしまうようなことも、自然に受け入れて使いこなしている姿を見ると、本当にたくましいと感じます。
オンライン英会話も多摩地域では初の取り組みでしたが、子どもたちはすぐに慣れて、楽しそうに会話をしています。
グローバル化が進み、世界がますますつながっていく時代において、英語は「チャンスをつかむための手段」です。英語を苦手と感じて将来一歩を踏み出せなくなるのはもったいないことです。ですから、今のうちから英語に親しみ、抵抗感を持たないようにとの思いで導入しました。
教育長
実際、初めて画面越しに英語で話した相手に自分の言葉が伝わったとき、子どもたちはとても感動していました。その成功体験が「もっと話したい」「外国の人と実際に会ってみたい」という意欲につながります。そうやって世界が少しずつ広がっていくのではないでしょうか。
実際に東京都が実施している中学3年生対象のスピーキングテスト(ESAT-J)でも、東大和市の生徒の伸び率は非常に高い結果が出ています。また、先生方からも「生徒が主体的に学ぼうとしている」という声が増えています。
私は子どもたちに、「授業を受ける」のではなく「授業をつくる」意識を持ってほしいと伝えています。PC端末やオンライン英会話の導入などで、「授業をつくる」マインドセットのようなものが育っていると感じています。

人生100年時代の生涯学習をどう育むか
子どもだけでなく、大人にとっても学びは重要です。生涯を通じて学ぶ「生涯学習」についてどのような考えを持っているのかお聞かせください。
市長
「生涯学習」といえば、以前は高齢者の方が公民館の講座などで学ぶ姿を思い浮かべましたが、今は時代が変わり、誰もが年齢に関係なく自分の興味や関心を深めたいと考えるようになっています。
人生100年時代と言われる今、どんなライフステージでも学び続けることが、心の豊かさや生きがいにつながるのではないかと思います。
仕事以外で自分を成長させる活動も、広い意味での生涯学習だと考えています。市としても教育委員会と協力し、誰もが気軽に新しいことに触れられる機会をつくることに力を入れています。
教育長
学びに年齢は関係ありません。誰もが主体的に学び、自分の人生をより楽しく、豊かにしていくことこそが本当の生涯学習です。そのための「きっかけ」となる体験や経験を提供することが、教育委員会の重要な役割だと感じています。
市長
その一例が、月に一度開催している「給食試食会」です。市として食育に力を入れており、市民の皆さんに学校給食を実際に体験していただくことで、子どもたちの食を守る環境への理解を深めてもらう場として好評です。調理工程を見学できる貴重な機会として、参加者から「子どもたちは、こんなにおいしいものを食べていたんだ」「野菜が多くて健康的!」「衛生管理が素晴らしい」といった声を多くいただいています。学校と家庭が一緒になって子どもの食育を考えるきっかけになればと思っています。

教育長
給食試食会はとても人気があります。学校のPTAや保護者団体だけでなく、市内のグループまたは個人でも参加できます。実際の給食を調理工程から見ることができる貴重な体験ですので、ぜひ一度参加していただきたいと思います。
市長
体験を通じて互いを知ることはとても大切です。知らないことが誤解を生み、対立を生むこともあります。そうではなく、行政と市民が互いに理解し合い、協力しながら未来を築いていく関係でありたいですね。
市報のリニューアルもその一つです。これまで「教育委員会だより」は、一部の市民の皆様にしか届きませんでした。しかし、教育情報を市報に掲載することで、広く市民に伝えられるようになりました。新しい試みですが、挑戦してみなければわからないと思います。これからも良いと思ったことにはどんどん挑戦し、必要とあらば、立ち止まったり、考えを見直したりしながら、柔軟に進めていきたいと考えています。
教育長
大人が柔軟に変化し挑戦する姿を見せることが、子どもたちの希望になります。今の子どもたちがどんな未来を描き、どのような大人になって東大和市を支えていくのか、本当に楽しみです。

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