○東大和市手話言語条例
令和7年3月26日
条例第12号
手話は、手指や体の動き、表情、口形などを用いて視覚的に表現する独自の文法を持つ言語であり、手話を必要とする者が、意思疎通を図り、社会活動に参加し、知的で豊かな生活を送るために必要な言語である。
しかしながら、手話に対する誤解や偏見等により、かつてその使用を事実上禁止されるなど、手話を必要とする者は、意思疎通における様々な制約を受けてきたが、こうした苦しい経験を経てきたにもかかわらず、手話とろう文化を守ってきた。
こうした中で、平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約や平成23年に改正された障害者基本法において、手話は言語であると位置づけられた。また、手話を「手話言語」と称するなど、手話が独自の言語であることを啓発する取組が進められるとともに、東京都においても、令和4年に東京都手話言語条例が制定された。こうした、手話に対する理解が広がる環境ができたものの、依然として市民の理解は必ずしも十分とはいえない状況である。
東大和市は、手話が言語であるとの認識の下に、手話を必要とする者の基本的人権が尊重され、手話による意思疎通の円滑化と、広く社会参加の機会が保障されるように努めるとともに、手話の理解の促進及び普及が、共に支え合い、誰もが安心して生きることができる地域共生社会の実現に資することを踏まえて、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解の促進及び普及に関し、基本理念を定め、東大和市(以下「市」という。)の責務並びに市民等の役割を明らかにするとともに、施策の推進を図ることにより、手話を必要とする者の基本的人権の尊重を図り、もって誰もが安心して共に生きることができる地域共生社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 手話を必要とする者 市民のうち、日常生活において手話を必要とするろう者、難聴者、中途失聴者、盲ろう者等をいう。
(2) 市民 市の区域内に住所を有し、居住し、通勤し、又は通学する者をいう。
(3) 事業者 市の区域内において事業活動を行う法人、団体又は個人をいう。
(基本理念)
第3条 手話の理解の促進及び普及は、手話は言語であるとの認識の下に、次に掲げる地域社会の実現に寄与することを踏まえて推進されなければならない。
(1) 手話による円滑な意思疎通により、手話を必要とする者が安心して暮らすことができる地域社会
(2) 学習、仕事、子育て、スポーツ、文化的活動等幅広い活動に取り組むことで、手話を必要とする者が心豊かに暮らすことができる地域社会
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話を必要とする者と協力して、手話の理解の促進及び普及並びに手話による意思疎通が図られやすい地域社会の構築に資する施策を講ずるものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念に対する理解を深めるとともに、基本理念の実現に向けた市の施策に対しても理解と協力に努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、基本理念の実現に向けた市の施策に対しても理解と協力に努めるとともに、事業活動において、手話を必要とする者との意思疎通の円滑化に資する措置を講ずるよう努めるものとする。
(施策の推進)
第7条 市は、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1) 手話の周知、啓発及び普及の促進に関する施策
(2) 手話を学ぶ機会の確保に関する施策
(3) 手話通訳者の養成及び確保に関する施策
(4) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために市長が必要と認める施策
2 市は、前項各号の施策を推進するに当たっては、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定による計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項の規定による計画と整合させるものとする。
(施策の推進における配慮等)
第8条 市は、前条第1項各号に掲げる施策を推進するに当たっては、次に掲げる事項に配慮して、関係機関と連携して対応し、又は関係機関に必要な協力を求めるよう努めるものとする。
(1) 前条第1項第1号の施策については、手話を必要とする者が、医療を受診する場合、災害が発生した場合等において、情報収集や意思疎通に支障が生じないようにすること。
(2) 前条第1項第2号の施策については、学校、公民館その他の学びの場において、幅広い世代に手話を学ぶ機会が提供されるようにすること。
(3) 前条第1項第3号の施策については、手話通訳者の知識及び技能の維持並びに専門性の向上が図られるようにすること。
(意見の聴取)
第9条 市長は、第7条第1項各号に掲げる施策を推進するため、手話を必要とする者及び手話通訳者等から意見を聴く機会を設けるものとする。
(委任)
第10条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、令和7年4月1日から施行する。